大麻(ヘンプの歴史)
日本では、古来より麻は主な八穀のひとつに数えられ食されていたり、繊維として活用されると同時に神事でも使われる身近な植物でしたが、第二次世界大戦のGHQ(連合国総司令本部)占領時下の1948年に「大麻取締法」が制定されてからは、大麻の栽培は都道府県の知事の許可制となりました。
それにより花穂や葉の利用は全面禁止され、医療目的の利用は医師も患者もできないという状況です。
歴史的に見ると、国際的な規制を受けるようになった1925年以前には、大麻チンキが欧米や日本でも医薬品として販売していた実績があります。
国際条約が発効されてからの動きですが、1970年代からのマリファナ合法化の草の根運動と人道的使用の観点から医療用大麻の規制緩和を求める声が徐々に大きくなり、1996年にはアメリカのカリフォルニア州での住民投票によって合法化。
それをきっかけにして、20年間かけてアメリカの半数の州で合法となり、オランダやカナダなどの国レベルで使えるところも増えてきています。
(※チンキ:濃度の濃いアルコールに漬け込み、成分抽出させた液体のこと)
大麻(ヘンプ)とは?
麻(ヘンプ)は、とうもろこしや、綿、大豆、麦、米等のように、育成に大量の水を必要とせず、防虫剤や除草剤等も必要なし。
さらに100日で収穫でき、連作障害もない夢のような植物です。 そして、問題視されている大豆のような遺伝子組み換え種子が無いので現代社会で暮らす私たちには安全です。
さらに、収穫時に落ちる落ち葉は地表に潤いを、根は大地の活性化に繋がると言われており、植える事で大地のデトックス効果が高いという研究結果もあるそうです。
そんな麻は、世界中の人々の暮らしで使われてきた植物です。
古くは、中国、インド、エジプト、アッシリア、ペルシア、ギリシャ、ローマ、縄文などの世界中の文明で、主に繊維・食品(香辛料)として利用されてきました。
そして、麻に含まれるCBD(カンナビジオール)という成分が、健康サポートに役立つ可能性が近年明らかになってきました。現在、CBDは麻に含まれる成分の中でも、最も注目すべきものになっています。
例えば、麻はバイオエネルギーの燃料や、エコプラスティックの原料としても注目されたり、医療用に利用されている国もあったりと、麻のあらゆる部分が、人々の生活に関われる植物だと言われています。
また、麻のCO2削減力は森林の木々の5倍以上CO2の吸収力と高く、環境適応能力も非常に高く、害虫等に強い植物です。
CBD(カンナビジオール)とは?
CBDの正式名称は「カンナビジオール」といいます。ヘンプ(麻)の主要成分の一つであるカンナビジオール(CBD)は、精神作用がない安全な栄養素です。ヘンプ(麻)の中には、 活性物質であるカンナビノイドが104種類存在しています。その中でもスーパースターと言われるのがカンナビジオール(CBD)であり、近年欧米などでは最も注目され、幅広く研究が進んでいる栄養素です。
一方、麻に含まれる成分で、マリファナの主成分であるTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)がいわゆる「ハイ」になる作用があるということで、1961年の麻薬に関する単一条約によって国際的な規制植物となっています。
THC及びCBDは、1960年代にイスラエルの化学者メクラム氏によって発見され、ポリフェノール構造をもちます。THC濃度が0.3%未満の産業用大麻と呼ばれているアサの品種にCBDは、1~15%ほど含まれています。
日本では、1948年に制定した大麻取締法によって、カンナビノイドを多く含む花穂と葉の利用を禁止しています。また、日本では、大麻取締法第四条によって、医師の交付、患者の施用の両方が禁止されています。現行法では、茎および種子由来のCBDであれば利用することができます。
CBDの有効性
近年、私たちのホメオスタシスを機能させるために“エンド・カンナビノイド・システム (ECS)”というものが存在していることがわかってきました。
エンド・カンナビノイド・システムは……
細胞と細胞のコミュニケーション(情報伝達)の調節や食欲、感情、免疫調整、発達と老化、神経保護、運動機能、認知と記憶などの機能をもち、あらゆる生体活動のベースになっていると考えられています。
“エンド・カンナビノイド・システム”は、1990年代に発見された“アナンダミド”と“2-AG”と呼ばれる体内カンナビノイドとそれらと結合する神経細胞上に多いカンナビノイド受容体“CB1”、免疫細胞上に多いカンナビノイド受容体“CB2”などで構成され、全身に分布しています。
実は、この“エンド・カンナビノイド・システム”を作動させるのに必要なのが「カンナビノイド」です。「カンナビノイド」が、脳や心臓、消化器系を中心に全身に分布している「カンナビノイド受容体」に、ピタッとはまることで“エンド カンナビノイド システム”は機能するといわれています。
※ホメオスタシスとは……
私たちの体には“人間の健康を維持できる力”=恒常性維持機能があります。
恒常性維持機能は“自律神経系”“免疫系”“内分泌系(ホルモン)”があり
この3つのバランスがとれていると、病気にならないと言われています。
最近の研究で“カンナビノイド”は外部からの 強いストレスなどで損傷したり、年齢を重ねるたびに欠乏の度合いが大きくなって、次第にシステムが働かなくなり、様々な疾患になることが明らかになってきました。
つまり、「カンナビノイド」が不足し、何もはめこまれていない受容体に新たに「カンナビノイド」を補えば、ふたたび“エンド・カンナビノイド・システム”を作動させることができるのです!
これらの作用を利用したカンナビノイド医薬品(イギリスGW製薬のサティベックス)が2005年にカナダで多発性硬化症の痛み改善薬として承認され、てんかん、ガン疼痛、神経膠腫、2型糖尿病、潰瘍性大腸炎、統合失調症などの疾患の臨床試験が進んでいます。
世界では…
世界でよく利用されている医学・生物学系の学術データベースMEDLINEによると、1000論文以上のカンナビノイドに関する研究が行われています。
ハーブ(薬草)=医療用大麻
カンナビノイドの利用が合法化した地域では、医薬品としてではなく、ハーブ(薬草)としての利用が一般的で、医療用大麻(Medical marijuana)と呼ばれています。
医薬品とハーブ(薬草)との相違点
海外において医療目的でのカンナビノイドの利用は、ハーブ(薬草)として利用されています。THCやCBDといった単一成分の利用よりも、ハーブとしての植物エキスの方が、生薬的な相乗効果=薬効があり、副作用が少ないことが挙げられています。学術的には、アントラージュ効果(側近効果)と呼ばれています。
医薬品のメリット
いわゆる「ハイ」にならないような製品設計をしている。細菌・カビ・重金属などの有害物の混入がないよう厳格な品質管理がされている。標準的な治療法が定まっているため医師や患者が扱いやすい
ハーブのメリット
THCとCBDだけでなく、他のカンナビノイドおよびテルペン類などの有効成分を摂取できる。品種や摂取方法がいろいろあるから楽しめる
=患者同士または薬局(ディスペンサリー)の人との会話が弾む
=QOL(生活の質の向上)、比較的価格が安い、合法な地域では、自分で栽培・調合・摂取できる
=セルフケア&園芸療法効果が期待できる